たばこと塩あれこれVarious topics of tobacco and salt

ミュージアムコレクション

外国の喫煙具

嗅ぎたばこ入れ

嗅ぎたばこ入れ

左から時計回りに
木製馬型嗅ぎたばこ入れ
(フランス、18世紀)
角製嗅ぎたばこ入れ
(イギリス、18世紀)
木製聖者彫り紡錘型嗅ぎたばこ入れ
(ドイツまたはオランダ、18〜19世紀)
貝製銀台座嗅ぎたばこ入れ
(イギリス、18〜19世紀)
角製嗅ぎたばこ入れ
(イギリス、1810〜20年代頃)

いずれも 旧「世界のたばこ工芸館」コレクション

※こちらは常設しておりません。

嗅ぎたばこの習慣は日本ではあまり馴染みがありませんが、16世紀以降にたばこが世界に広まっていく中で、もっとも広く普及したのは嗅ぎたばことしての利用でした。その理由としては、特にヨーロッパで、粉末のたばこを鼻から吸うという行為が、コレラやペストなどの疫病予防や、喘息などに効き目があると信じられていたことがあげられます。

嗅ぎたばこは、その流行の初期の頃には、利用するごとに専用のおろし金でおろしたものを使用していましたが、17世紀に入り、すでにすりおろされた嗅ぎたばこが専門業者によって販売されるようになると、微粉末状になった嗅ぎたばこを収納する容器が必要になってきました。当初は、砂糖菓子やボンボン用の小さな箱や白粉用の箱などが代用品として使われていましたが、やがて専用の容器としての嗅ぎたばこ入れが作られるようになっていきました。

嗅ぎたばこは、17世紀のフランス宮廷での流行をきっかけに広く普及していきますが、宮廷を取り巻く人々の間で使われていた嗅ぎたばこ入れは、金・銀・宝石をふんだんに使い、また精巧な装飾を施した贅を尽くしたもので、実用品の域を越えたものもありました。

宮廷から広まった嗅ぎたばこは、やがて市民階級の名士や豪農といった人々から、後には農家の主婦に至るまでが楽しむようになっていきました。こうした人々が、宮廷で使われていたような高価な嗅ぎたばこ入れを手にすることはありませんでしたが、それぞれの地方に特色のある素材に、装飾や工夫を凝らした素朴な嗅ぎたばこ入れを作り出していきました。

またフランスの宣教師によって嗅ぎたばこが伝えられた清時代の中国では、玉石やガラス、陶磁器製の「鼻煙壺(びえんこ)」と呼ばれる嗅ぎたばこ入れが生み出され、独特な工芸品として発達していきました。