たばこと塩あれこれVarious topics of tobacco and salt

ミュージアムコレクション

塩

遊牧民の塩入袋/バルーチ族の塩入袋

遊牧民にとって、塩は、単に食用としてだけでなく、家畜の群れのコントロールなど、生活上欠かすことのできない重要な役割を担っています。塩は、生理的に塩欲求の強い草食動物の習性を利用して、家畜の群れのコントロールもできるのです。中でも、イラン・アフガニスタン・パキスタンにかけての西アジア地域に展開するクルド族やバルーチ族をはじめとした遊牧民は、伝統的に、各部族を象徴する紋様を織り込んだ羊毛織の塩入袋(ナマクダーン)を使用してきました。人間が使う塩もこれらの塩入袋に入れて保管・運搬することで家畜に舐められないように、袋の口を小さくした凸字形をしているのが特徴です。当館では12点の塩入袋を収蔵しています。

バルーチ族の塩入袋
バルーチ族の塩入袋
(アフガニスタン 1970年代)
バルーチ族は、イラン東部、パキスタンのバルチスタン地方、アフガニスタン南部にまたがる地域を中心に生活する遊牧民です。バルーチ族の塩入袋は、他の部族のものに比べて渋い、深く落ち着いた濃い色合いをしているのが特徴です。織り込まれた幾何学模様は、日本の家紋に相当するような意味を持ち、他部族からの略奪を防ぐのにも役立っています。