たばこと塩あれこれVarious topics of tobacco and salt

たばこの歴史と文化

明治以降のたばこ文化

明治民営期のたばこ産業

シガレット

明治時代に日本に登場した新しい喫煙風俗の代表は、紙巻たばこ=シガレットです。
シガレットは19世紀後半から欧米で本格的に作られるようになり、急速に普及しつつありました。幕末から明治にかけての日本では、葉巻やパイプも入ってきましたが、紙巻たばこは、ハイカラな風俗のシンボルとして日本人の興味を引きました。また、輸入されたシガレットパッケージの美しい印刷やデザインも日本人を驚かせました。そして、日本の国内でも、シガレット作りに挑戦する人々が登場し、新しい産業へと育っていきました。

輸入シガレットのパッケージ

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口付(くちつき)と両切り

当時の紙巻たばこには口付と両切りの2種類がありました。

*口付(くちつき)

口付たばこは、ロシアで発達し、北欧で多く見られましたが、現在では、次第に生産量が少なくなっています。日本では、現在、生産されていません。紙巻たばこに口紙と呼ばれるやや厚い円筒形の吸い口をつけたもので、そこを吸いやすいようにつぶして喫煙しました。

口付(くちつき)

*両切たばこ

両切たばこは、刻んだたばこを紙で巻き、両端をそろえて切断したものです。明治時代、口付たばこに慣れていた日本では「マウスピース」と呼ばれる紙のパイプを付けた両切たばこが販売されていました。

両切たばこ

土田安五郎の賞状

土田安五郎は、国産紙巻たばこ製造の創始期における重要な人物です。たばこ刻みを内職とした彦根藩の下級武士で、明治になって東京に出て、紙巻たばこの製造を試みました。この賞状は、明治14年(1881)、第2回内国勧業博覧会に出品した土田安五郎の紙巻たばこが有功賞を受けた時のものです。当時の博覧会には紙巻たばこの出品が多かったという記録から、目新しい国産品として注目されていたことがうかがえます。

土田安五郎の賞状

明治時代の刻みたばこ

明治になり、紙巻たばこなど、新しいたばこが現われてきますが、全国的に見ると、多くの日本人は、伝統的な細刻み(ほそきざみ)たばこをきせるで吸う方法を楽しんでいました。明治30年代には、約5000人のたばこ製造業者がいましたが、その大半は、刻みたばこを製造していました。

*動力の時代へ

明治時代に入ると、刻みたばこの製造技術には、欧米の技術的要素を取り入れた進歩が見られます。座作業のゼンマイから、クランク機構を使った足踏み式が考案され、さらに、水車・蒸気機関・石油発動機などの動力が導入されて、経営規模は拡大しました。この進歩は、欧米の技術をうのみにしたものではなく、すでに高い水準に達していた従来の技術を、より能率的に改良したものであり、この時代の技術史を考えるうえでも重要です。

動力を導入したたばこ工場(明治38年)

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水車刻みの図

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