たばこと塩あれこれVarious topics of tobacco and salt

たばこの歴史と文化

たばこ文化のふるさと

古代アメリカのたばこ文化(儀礼・薬用・楽しみ)

儀礼・薬用・楽しみ

広大なアメリカ大陸には、紀元前からさまざまな地域に特色ある文化が発達しました。こうした文化は、15世紀末に起こるヨーロッパとの接触をきっかけに世界に広まっていきましたが、たばこの利用もそのひとつです。
アメリカ大陸の古代文明では、たばこは、神々に捧げるための植物として重要な役割を果たしていました。神への供物として儀式に欠かせなかったたばこは、呪術的な治療にも利用されながら、長い歴史のなかで、徐々に安らぎを得るための嗜好品(しこうひん)として使われるようになっていきました。

*儀式に

新大陸では、たばこは儀式に欠かすことのできないものでした。その紫煙は神々へのよき供物であり、また、神託をもたらすものとして、火にくべて炎の動きや煙の形から、戦いの勝敗、未来や吉凶を占いました。
北米先住民の間で、和を結ぶ儀式にパイプが吸われていたことは、よく知られています。

*薬用に

新大陸の古代文明では、病気は体に宿った悪霊のせいで、霊力を持つ呪術師がそれを追い払うことで回復すると考えられていました。たばこは、こうした呪術的な治療にも利用されていました。

*楽しみに

たばこは、神事祭祀(さいし)に用いられていただけでなく、次第に嗜好品(しこうひん)としても楽しまれるようになっていきました。メソアメリカ(中米)では、喫煙は貴族や戦士などの特権とされていたのですが、一般の人々も誕生祝い、結婚祝いの場で必ず出されるたばこを楽しむうちに、日常生活の中に喫煙の風習が広がっていきました。

たばこによる陶酔状態(16世紀)

  • たばこによる陶酔状態(16世紀)

たばこを吸う神

たばこを吸う神
これはマヤ遺跡のひとつ、メキシコ、チアパス州にあるパレンケ遺跡の 「十字の神殿」入口奥の石柱に刻まれたレリーフ(浮彫り)の複製です。擬人化された神が、たばこ(葉巻)をくゆらせている場面を表現していると思われます。 マヤの人々は、祭祀(さいし)や儀式、占いの他、病気の治療にも広くたばこを用いていました。

左手に花束、右手にたばこを持ってくつろぐアステカ王国のモクテスマ王。

  • 左手に花束、右手にたばこを持ってくつろぐアステカ王国のモクテスマ王。
    「リオス絵文書」(16世紀)