過去の特別展
江戸から明治にかけて、おもちゃ絵などと呼ばれる子ども向けの浮世絵が作られていました。
虫尽くしや道具尽くしといった同じジャンルのものを一枚に集めて描いた物尽くし、昔話の絵本を仕立てるもの、組み上げ絵や廻り灯籠のような細工物、双六、福笑いのようなゲーム、着せ替えやかつらつけなど、多くの種類があります。
おもちゃ絵は、無名の浮世絵師たちだけではなく、役者絵や美人画、風景画などで知られる有名絵師たちの作品もあります。しかし、どのような絵師が描いたものであっても、主に子ども向けのものであり、また実用品であることには変わりありません。切り抜かれたり、汚されてしまったりして、大切には扱われず、多くは子どもたちの成長とともに処分されてしまう運命にありました。
本展では、物尽くし、昔話、細工物、そしてゲームのようなものまで、さまざまなおもちゃ絵約80点を展示します。おもちゃ絵の楽しさを紹介しながら、当時の人々の知識や考え方、遊びなどをお伝えします。
出品リストはこちら(534kb)
-
新板手遊尽し
二代歌川広重 弘化4~嘉永3年(1847~1850) 個人蔵
おもちゃが数多く描かれ、それぞれに名前も入っているため、当時の子どもたちの遊びについて知ることができます。 -
新板かたち凧づくし
歌川芳藤 嘉永2~5年(1849~1852) 個人蔵
小さな凧を作ることができるおもちゃ絵。
「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵 PART1」開催概要
- 主催
- たばこと塩の博物館
- 会場
- たばこと塩の博物館 2階特別展示室
- 開館時間
- 午前11時~午後5時
(入館は午後4時30分) - 休館日
- 毎週月曜日(ただし9/21は開館)、
9/23(水)休館
- 入館料
-
大人・大学生 100円
小・中・高校生 50円
満65歳以上の方 50円 ※年齢がわかるものをお持ちください。
※障がい者の方は障がい者手帳などのご提示で付き添いの方1名まで無料。
※なるべく少人数でのご来場をお願いします。
※密集を避けるため、入場制限をさせていただく場合があります。当館の 〈新型コロナウイルスに関連した対応について(2020.10.1)〉もご覧ください。
※新型コロナウイルス感染症拡大の状況によっては、開館時間の変更や臨時休館をさせていただく場合があります。最新の開館状況等は、公式ツイッター、お電話、当ホームページ等でご確認ください。
展示関連イベント
展示関連イベントの予定はありません。
展示作品の紹介
18世紀のおもちゃ絵
江戸時代、木版印刷技術の発達と相まって出版業が盛んになると、庶民も出版物を手にできるようになり、子ども向けにも出版物が誕生し、18世紀には多くのものが作られていました。当初は冊子の形が多かった子ども向けの出版物は、次第に一枚絵の形でも出されるようになり、おもちゃ絵として発展していきました。
ここでは、18世紀に出版された素朴なおもちゃ絵、おもちゃ絵が描かれた作品などを紹介します。
-
折り変わり絵
18世紀前半 たばこと塩の博物館蔵
絵柄が両面に摺られていて、折ることによって、顔やポーズ、持ち物などが変わります。 -
風流江戸八景 真乳山の暮雪
鈴木春信 明和5~6年(1768~1769) たばこと塩の博物館蔵
室内の男女が炬燵に入りながら、「道中双六」で遊ぶ様子が描かれています。
19世紀のおもちゃ絵
19世紀になると、物尽くし、昔話、細工物、ゲームなど、数限りない、多彩なおもちゃ絵が作られるようになりました。特に19世紀半ば以降は、おもちゃ絵に親しむ母子の姿がたびたび浮世絵に描かれるようになり、江戸という都市では、ごく普通の庶民がさまざまなおもちゃ絵を楽しんでいたことがわかります。
ここでは、19世紀に花開いた数々のおもちゃ絵を紹介します。
-
准源氏教訓図会 絵合
歌川国芳 天保14~弘化元年(1843~1844) 個人蔵
床には香箱尽くしや役者絵などが散らばり、香箱尽くしは切り抜かれています。日常的におもちゃ絵を親子で楽しんでいたことが窺えます。
19世紀のおもちゃ絵 — 物尽くしおもちゃ絵 —
19世紀にもっとも多く作られたと考えられる物尽くしおもちゃ絵。見て楽しいものはもちろん、物の分類を学んだり、名前を知ったりすることができる図鑑のようなもの、動物などを擬人化したものもあります。特に天保改革以降には、猫、たぬき、金魚、コウモリ、ほうずき、独楽などを擬人化した戯画が歌川国芳を中心に描かれ、流行、それをまねたおもちゃ絵も作られました。
-
新板毛物づくし
歌川芳幾 安政6年(1859) 個人蔵
図鑑のようなおもちゃ絵。ある程度写実的に、実物の縮尺に合わせて描かれています。楽しく学ぶために作られた簡易版の図鑑のようなものだったのでしょう。 -
新板たぬき尽
二代歌川広重 嘉永2~5年(1849~1852) 個人蔵
このおもちゃ絵には、たぬきの八畳敷が面白おかしく描かれています。
19世紀のおもちゃ絵 — 昔話のおもちゃ絵 —
18世紀には主に絵本の形だった子ども向けの昔話は、次第に一枚摺りの形で出版されるようになりました。簡易な一枚摺りになったことで、より多くの子どもたちが手にすることができたと思われます。文字がないものも多くみられ、親たちは絵を見せながら子どもにお話を聞かせたのでしょう。
-
昔咄かちかち山
歌川芳藤 安政4年(1857) 個人蔵
この作品を8枚に切り分けて順にはり合わせると、小さな絵本を作ることができます。昔話のおもちゃ絵には、このように、豆本(小さな本)仕立てのものも多くみられます。 -
舌切り雀
歌川国周 19世紀後半 たばこと塩の博物館蔵
豆本仕立て風ですが、自由なコマ割りで描かれた作品。子どもたちの大好きなお化けも登場します。
19世紀のおもちゃ絵 — 細工物おもちゃ絵 —
組み上げ絵や廻り灯籠など、切り抜いて組み立てるおもちゃ絵もあります。現在のペーパークラフトに似ていますが、自分で裏打ちして握りバサミで切り抜き、小さな完成図をみて想像しながら組み立てるものでした。子どもだけで作りあげるのは困難で、親子で楽しんだものと思われます。
-
十干兄弟ノ内 丙
三代歌川豊国 弘化(1844~1848)頃 個人蔵
廻り灯籠は、上部に風車をつけ、中に明かりを灯し、上昇気流で中の影絵が動くように仕掛けた灯籠です。この作品では美人が廻り灯籠をみています。 -
組上廻どうろふ(雷)
二代歌川豊久 天保(1830~1844)頃 個人蔵
左の作品「十干兄弟ノ内 丙」に描かれている廻り灯籠は、このような図から作ったのだと考えられます。組み上げる前の様子が分かって興味深いものです。
19世紀のおもちゃ絵 — ゲームのおもちゃ絵 —
絵双六、福笑い、かるた、十六むさし、目付け絵など、多くの紙のゲームがありました。特に絵双六については、定番の道中双六をはじめ、飛び双六という、別のルールで遊ぶものも大量に作られました。大きさ、テーマもそれぞれで、袋付きで売り出されたものも多くありました。
-
福笑い
歌川芳員 嘉永4~5年(1851~1852) 個人蔵
切り抜く前の福笑い。右側の目口鼻などのパーツの下の部分は、袋にして、お福の顔やパーツを保管できるようになっています。 -
新板鳥さし双六
二代歌川広重 弘化(1844~1848)初め 個人蔵
振り出しは鳥刺しで、上りは鷹狩りをする殿様になっています。この双六は、当時よくみられた飛び双六というもので、サイコロの目の数でコマを進めるのではなく、マスに記された指示に従ってコマを動かします。













