特別展Exhibition

過去の特別展

たばこの伝来後、日本では喫煙に必要な道具を備えるために、たばこ盆が登場しました。たばこ盆は、単に喫煙に使うだけでなく、小間物の収納や来客へのおもてなし、商店の宣伝媒体、時には炭火を保つ生活必需品の様な役割も担いながら、人々の暮らしに寄り添ってきました。
しかし、明治以降、きせるから紙巻たばこへと徐々に喫煙形態が移り変わるのに合わせて、たばこ盆の姿も変化していき、現代では、芝居やお茶席以外の場面ではなかなか見かけないものとなってしまいました。
工芸品としても地味な存在といえるたばこ盆ですが、実は、木工、漆芸、金工など有名無名の職人たちの多彩でたしかな技を見ることができます。かつては日用品として使用されていたものでありながら、その形状や意匠など、見どころはつきません。
本展では、当館が所蔵する700点を超えるたばこ盆の中から、約80点を展示します。簡素な普段遣いのものから絢爛豪華な大名道具まで、様々な素材、装飾、技法など、職人の技が光るたばこ盆の魅力をご紹介します。

  • 草花蒔絵提げたばこ盆
    詰梨子地に品良く、手間をかけて描かれた四季の草花が散らされていて、紀州徳川家伝来品としての豪華さを見ることができます。

  • 葵散し螺鈿蒔絵たばこ盆
    葵のみをモチーフとしていますが、種類の異なる蒔絵粉を用いた蒔絵や、螺鈿で変化をつけています。さらに、引出しのつまみは葵の葉をかたどり、風覆や火入れ周囲の透し彫りも葵形とするなど、細部まで葵で統一されています。

「シブい工芸 たばこ盆 ~地味な立ち位置・たしかな仕事~」開催概要

主催
たばこと塩の博物館
会場
たばこと塩の博物館 2階特別展示室
開館時間
午前11時~午後5時
(入館締切は午後4時30分)
休館日
毎週月曜日
入館料
一般・大学生 100円
小・中・高校生 50円
満65歳以上の方 50円 ※年齢がわかるものをお持ちください。
※障がい者の方は障がい者手帳などのご提示で付き添いの方1名まで無料。
※なるべく少人数でのご来場をお願いします。

※密集を避けるため、入場制限をさせていただく場合があります。当館の 〈新型コロナウイルスに関連した対応について(2021.6.1)〉もご覧ください。
※新型コロナウイルス感染症拡大の状況によっては、開館時間の変更や臨時休館をさせていただく場合があります。最新の開館状況等は、公式ツイッター、お電話でご確認ください。

展示関連イベント

展示関連イベントの予定はありません。

たばこ盆いろいろ 作品の紹介と解説

たばこ盆の基本

今では馴染みのなくなった「たばこ盆」を構成する用具や名称、「盆形」「風覆形」「箱形」「長角」「升形」「鬢台形」といった形の分類など、たばこ盆の基本についてご紹介します。

  • たばこ盆の構成と名称
    ※“きせる掛け”は便宜上の名前です

  • たばこ盆の主な形
    左上から時計回りに、「長角形」「盆形」「風覆(かざおおい)形」「箱形」「鬢台(びんだい)形」「升形」

  • 【鬢台形】
    沢瀉(おもだか)紋蒔絵たばこ盆

  • 【升形】
    鳴子螺鈿蒔絵たばこ盆

展示構成メニューに戻る

あちらこちらにたばこ盆

風俗画や浮世絵からは、たばこ盆がどのように使われてきたのかをうかがうことができます。ここでは、絵画作品に登場するたばこ盆と似た形状のたばこ盆をご紹介します。

  • 「邸内遊楽図」(部分)17世紀中期 紙本着色
    遊廓と思しき邸内にて、すごろくや音曲といった遊興にふける人々の傍らにたばこ盆が描かれています。

  • 朱漆塗たばこ盆
    たばこ盆の名にふさわしい「丸盆形」のたばこ盆

  • 「冨嶽三十六景 東海道吉田」
    葛飾北斎 天保2年(1831)頃 大判錦絵
    有名な「冨嶽三十六景」シリーズの一枚。作品中央には、製材していない木をそのまま用いたたばこ盆が描かれています。当館でも作品に描かれたもの同様の、未製材の自然木に底板を当ててたばこ盆としたものを複数所蔵しています。

  • 自然木利用のたばこ盆

展示構成メニューに戻る

見どころいろいろたばこ盆

たばこ盆は登場以来、日用品として使用されてきたものですが、工芸品としてみると、漆塗りや蒔絵によって加飾された本体はもちろん、火屋(火入れの蓋)や金具の彫金にも高い技術が反映されています。ここでは、「工芸の宝庫」としてのたばこ盆を様々な切り口でご紹介します。

  • 【素材を活かしたたばこ盆】
    桶形たばこ盆
    竹や桑、黒檀など様々な素材の板を寄せて、竹の箍(たが)でまとめています。木地の見本のような桶形のたばこ盆です。

  • 【変わった仕立てのたばこ盆】
    夕顔蟋蟀蒔絵たばこ盆
    夕顔の実に大きな葉をあしらい、虫食い穴から、蟋蟀が顔を出しています。蒔絵は白山松哉(しらやましょうさい)の弟子・柳沢一抱(やなぎさわいっぽう)によるもの。

  • 【大名家のたばこ盆】
    牡丹蒔絵手付きたばこ盆
    紀州徳川家14代藩主夫人の旧蔵品。三方を銀製の御簾が覆い、本体四面にわたって金銀色の牡丹が咲き誇るという豪勢な意匠のたばこ盆。

  • 【良家のものと思しきたばこ盆】
    葵蒔絵手付きたばこ盆
    三方に風よけがある「風覆形」のたばこ盆。本体には、葵と唐草の蒔絵が丁寧に描かれ、風覆には桐鳳凰文様の布が用いられるなど、見どころがたくさん。

  • 【植物を描いたたばこ盆】
    朝顔蒔絵螺鈿手付きたばこ盆
    本体だけではなく、火屋や提げ手の留具、つまみ金具にまで朝顔の花や葉をあしらったたばこ盆。花は螺鈿や金貝で表しています。
    ※金貝とは、金銀箔を文様の形に切り抜き貼り付けた技法。

  • 【目をひく形のたばこ盆】
    縄暖簾蒔絵提げたばこ盆
    火屋を茅葺屋根に見立て、火入れ周りの造形に工夫が見られるたばこ盆。本体を覆う縄暖簾の蒔絵も見事なもので、縄の縒り一つ一つを描いているなど、細かな仕事に圧倒されます。

展示構成メニューに戻る

時の流れとたばこ盆

幕末に外国からもたらされた紙巻たばこは、その手軽さから徐々に広まり、昭和初期にはきせるにかわって主要な喫煙形態となりました。着火方法も、火入れで種火を保つスタイルにかわって、マッチやライターなどの便利な道具が主流となっていきました。その流れを受け、たばこ盆にも紙巻たばこのための新しい形態として「たばこ箱」や「たばこセット」が登場しました。ここでは、時代の移り変わりによるたばこ盆の変化について紹介します。

  • 「女礼式之内 客を座敷へ入る火鉢煙草盆進め様」
    楊洲周延 明治26年(1893) 大判錦絵三枚続き
    明治中期以降に、女性向けの礼法教育が盛んになり、来客へのたばこ盆と火鉢の勧め方も礼法の一つとされました。この作品からは、この時代には、まだ従来のたばこ盆が用いられ、身近な存在であったことがうかがえます。

  • やしゃぶし蒔絵たばこ壺
    刻みたばこ用のたばこ壺。金属と見紛うような青銅塗の本体にやしゃぶしが描かれ、蓋には桐が使われています。青銅塗を得意とした柴田是真の銘があります。

  • 水草に貝蒔絵台付巻たばこ箱
    柴田是真の孫・成真による紙巻用のたばこ箱。箱も台も祖父譲りの青銅塗の地で仕上げられています。

  • 流水蒔絵たばこセット
    紙巻たばこを入れる「たばこ箱」と「灰皿」で構成された「たばこセット」。このたばこセットには、指物師として名高い前田南斎の銘があります。

展示構成メニューに戻る