特別展Exhibition

過去の特別展

「ヴィンテージライターの世界 炎と魅せるメタルワーク」開催概要

インドネシアでは、地域ごとに色彩も意匠もさまざまな絣織り(イカット)が織られています。民族考古学を専門とする江上幹幸(えがみともこ)氏(元 沖縄国際大学教授)は、製塩や交易をテーマに長年に渡り東部インドネシアで調査してきました。本展では、江上氏の研究成果とコレクションを3部構成でご紹介します。
第1部では、江上氏の主な調査フィールドであるレンバタ島で蒐集したイカットをご紹介します。レンバタ島のイカットは、伝統捕鯨で得たクジラ肉や塩、染料に必要な石灰など “海の恵み” を持つ「海の民」と、農産物や染料になる藍や茜など “山の恵み” を持つ「山の民」との交易なくしては生まれません。
第2部では、「海の民」がすむラマレラ村を中心に、レンバタ島のイカットの背景にある暮らしと交易にスポットをあてます。イカットの制作工程や、塩・石灰など交易品の生産、伝統捕鯨、それらに基づいて機能する交易システムについて、江上氏と共同研究者である小島曠太郎(こじまこうたろう)氏(文筆家・捕鯨文化研究家)による写真などで解説します。さらに、イカット制作に不可欠なだけでなく、生活の様々な場面で重用されるヤシ利用の文化についても写真と実物資料で紹介します。
第3部では、多くの島からなる広大なインドネシアのうち、フローレス島とその東の島々や、ティモール島西部で江上氏が蒐集してきたイカットを展示し、その多彩なデザインをお楽しみいただきます。
布としての魅力を備えたイカットのほか、多くの民族資料や写真を通して、インドネシア・レンバタ島ラマレラ村の素朴で力強い生活文化についてご紹介します。

  • 腰衣(婚資)
    レンバタ島ラマレラ村
    1975×690mm 木綿/絣/藍・茜 1970年頃
    ※船、マンタの文様が入っています。

  • 伝統捕鯨のようす
    (撮影:江上幹幸)

「江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~」開催概要

主催
たばこと塩の博物館
会場
たばこと塩の博物館 2階特別展示室
開館時間
午前10時〜午後5時
(入館締切は午後4時30分)
休館日
毎週月曜日
入館料
大人・大学生 100円
小・中・高校生 50円
満65歳以上の方 50円 ※年齢がわかるものをお持ちください。
※障がい者の方は障がい者手帳(ミライロID可)などのご提示で付き添いの方1名まで無料。
※なるべく少人数でのご来場をお願いします。

※密集を避けるため、入場制限をさせていただく場合があります。ご来館の際は、当館の 〈新型コロナウイルスに関連した対応について(2023.1.21)〉もご覧ください。
※新型コロナウイルス感染症拡大の状況によっては、開館時間の変更や臨時休館をさせていただく場合があります。最新の開館状況等は、公式ツイッター、お電話でご確認ください。

展示関連イベント

※新型コロナウイルスの感染状況によっては、講演会を中止させていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

展示関連講演会
「海と山の交易から生まれるイカット」
日時:3月25日(土)14:00
講師:江上 幹幸(元 沖縄国際大学教授)
会場:3階視聴覚ホール
「クジラと生きる-ラマレラ村の捕鯨文化とは-」
日時:3月26日(日)14:00~
講師:小島 曠太郎(文筆家・捕鯨文化研究家)
会場:3階視聴覚ホール
「クジラと塩と布の物語-30年間の研究を振り返って-」
日時:4月8日(土)14:00~
講師:江上 幹幸・小島 曠太郎
会場:3階視聴覚ホール
  • ※往復ハガキによる事前申込制で、定員は40名。応募ハガキは、2月28日(火)必着、応募多数の場合は抽選となります。

※参加申込の受付は終了しました。多数のお申し込み、ありがとうございました。

展示の構成と作品紹介

レンバタ島のイカット 「海の民のイカット」

レンバタ島のイカットは、「海の民」と「山の民」とが物々交換によって制作に必要な材料を補い合うことで成り立っています。
全工程が手作業でつくられるイカットは、日常着・祭礼着として暮らしの中に息づき、結納品(婚資)としても重要なものになっています。レンバタ島のイカットは、一見すると地味ですが、深い色合いの茜と藍で染められ、伝統的な意匠であるマンタのほか、人物の意匠などもみられます。
ここではレンバタ島の中でもラマレラ村に住む「海の民」のイカットをご紹介します。男性が伝統捕鯨を担い、女性が製塩や石灰づくりのほか「山の民」との交易を担う「海の民」は、イカットの材料である綿や、染料となる植物を持ちません。「山の民」との交易で、綿や藍・茜などを入手してイカットを織ります。

  • 腰衣(婚資)
    レンバタ島ラマレラ村
    1330×740mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃
    ※マンタの文様が入っています。

  • 腰衣(晴着)
    レンバタ島ラマレラ村
    1310×700mm 木綿/絣/藍・茜・ウコン 1980年頃
    ※マンタの文様が入っています。

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レンバタ島のイカット 「山の民」のイカット

ここでは「山の民」のイカットをご紹介します。「山の民」は主に焼畑農業を営むレンバタ島の先住民です。もともとイカットの技術を持っていたと考えられます。綿、藍、茜などイカットに必要な素材は自ら産出しますが、藍染に不可欠な石灰は「海の民」との交易でまかなっています。

  • 腰衣(婚資)
    レンバタ島アタデイ郡
    2250×664mm 木綿/絣/藍・茜 1970年頃
    ※人物の文様が入っています。

  • 腰衣(婚資)
    レンバタ島アタデイ郡
    2660×588mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃

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レンバタ島のイカットを生み出す生活文化 その1

ラマレラ村のイカットは、伝統捕鯨で得たクジラ肉、自らつくった塩、石灰など “海の恵み” を持つラマレラ村の「海の民」と、主食の農産物に加え染料となる藍や茜など “山の恵み” を持つ「山の民」の交易で生まれます。
ここでは、イカットづくりのようすと、クジラ肉とならんで重要な交易品である塩について、江上幹幸氏と小島曠太郎氏による写真で解説します。

  • イカット作りのようす(撮影:江上幹幸)
    「山の民」との交易で得た綿の繊維を、紡錘で糸に紡ぎます。島では、歩きながら紡ぐ姿もよくみられます。

  • イカット作りのようす(撮影:江上幹幸)
    紡いだ糸は後帯機で織ります。

  • ラマレラ村の製塩のようす(撮影:江上幹幸)
    海岸の岩の上にある、灰や石灰で区切られた浅い蒸発池で海水を濃縮します。

  • ラマレラ村の製塩のようす(撮影:江上幹幸)
    蒸発池の濃縮海水を持ち帰り、鉄鍋で煮つめて、塩の結晶を得ます。
    塩はクジラ肉の保存のほか、クジラが捕れない時の交易品としても重要です。

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レンバタ島のイカットを生み出す生活文化 その2

イカットの背景には交易があります。その交易の中で最も重要なのはクジラ肉です。ここでは、クジラ肉を得るための伝統捕鯨、それらの交易品を物々交換する「山の民」との交易について、江上氏と小島氏による写真で解説します。

  • 伝統捕鯨のようす(撮影:小島曠太郎)
    ラマレラ村では、全長10メートルの木造帆船「プレダン」に10~13人ほどの「海の民」の漁師が乗り、手漕ぎで漁を行います。捕獲には手投げの銛を使います。マッコウクジラの漁には様々なタブーがあり、分配法も厳密に決められています。

  • クジラ肉と農産物の物々交換(撮影:小島曠太郎)
    レンバタ島ラマレラ村「海の民」の女性は、クジラ肉、塩、石灰などを持って、行商や定期市に出かけ、「山の民」との物々交換で、主食となる農産物のほか、綿や染料などイカットの材料を手に入れます。

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インドネシア東部のさまざまなイカット

江上氏は、研究テーマのひとつである「巨石記念物」調査の一環として、1980年代後半から30年以上歩き続けたインドネシア東部の村々で、少しずつイカットを蒐集してきました。「巨石記念物」を残す調査地には、必ず島ごと、地域ごとに異なる染織物の文化がありました。ここでは江上氏が民族考古学調査を通じて、レンバタ島以外で出会い、蒐集してきた魅力的なイカットの中から一部をご紹介します。

  • 【フローレス島やその東側諸島のイカット】
    村や地域によって文様や色合いに特徴があります。
    腰衣(婚資)
    フローレス島イレマンディリ郡
    1700×620mm 木綿・貝/絣/藍・茜 1970年頃
    ※幾何学模様と点描で構成されています。

  • 【フローレス島やその東側諸島のイカット】
    腰衣(晴着)
    アロール島北西アロール郡
    1400×708mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃
    ※ウミガメの文様が入っています。

  • 【ティモール島西部のイカット】
    布の図柄と織り技法の豊富さに特徴があります。
    腰衣
    ティモール島ベル県
    1611×584mm 木綿/絣/藍・茜 1980年頃
    ※人やウマ、ワニの文様が入っています。

  • 【ティモール島西部のイカット】
    腰巻
    ティモール島西アマヌバン郡
    1804×1024mm 木綿・紡績糸/絣/藍・茜・ウコン 1980年頃
    ※ワニの文様が入っています。

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江上幹幸コレクションについて

江上幹幸氏(元 沖縄国際大学教授)は民族考古学者として、沖縄~インドネシアをフィールドに製塩技術や巨石記念物などを研究してきました。インドネシアではフローレス島やその東側諸島、ティモール島を中心に古くから残る基層文化を調査し、その過程で出会ったイカットを蒐集するうち、1,000点に及ぶコレクションになりました。
江上氏の所蔵品は、作品そのものだけでなく、その背景にある伝統捕鯨や製塩、交易といった生活文化まで一体で蒐集された稀有なコレクションといえます。このコレクションは「アトリエ・バレオ」と名付けた沖縄の自宅で保管・展示しています。

  • 沖縄のアトリエ・バレオ 2020年春

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