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「実習生を迎えたり、写真展が始まったり…
たば塩の初秋のようすをお届けします!」2015.10.02

すっかり秋ですね。ごぶさたしてしまいましたが、みなさま、お変わりありませんか?

9月はお天気がなかなか安定しませんでしたが、シルバーウィークは気持ちのいい秋晴れの日ばかりでした。連休は、東京スカイツリータウンに行けばたくさんの人であふれ、また、たば塩ブログでも何度かふれた牛嶋神社さんの秋の祭礼もありました。夏のイベントを終えて静かだったたば塩にも、にぎやかさが戻ってきた期間でした。

シルバーウィークが始まってすぐ、素晴らしい秋晴れの日。雲ひとつない真っ青な背景のスカイツリーを見るのは、久しぶりでした。

シルバーウィークが始まってすぐ、素晴らしい秋晴れの日。雲ひとつない真っ青な背景のスカイツリーを見るのは、久しぶりでした。

さて、今回のブログでは9月に行われた博物館実習と、ただ今開催中の写真展について、ご紹介したいと思います。

たば塩では、9月8日(火)から18日(金)まで、休館日をのぞく10日間の日程で博物館実習を行いました。昨年は休館していたため、実習生の受け入れもお休みしました。そのため、一年ぶりの、移転後初の実習となりました。開館して数カ月しか経っていない時期に実習生を受け入れられるのか? きちんとしたプログラムを提供できるのか? など、実習の実施そのものの検討から始まった今年の博物館実習でしたが、ニーズがあることに加え、当館のオペレーションも通常バージョンにしていく必要があり、受け入れることに決定しました。さまざまな博物館・美術館で博物館実習を行っていて、そのプログラムはさまざまなようですので、今回は、少しだけ当館の博物館実習の内容にふれてみます。

実習担当の学芸員は基本1人です。ただ、プログラムの内容によって、他の学芸員が協力します。実習生の人数は、年によって変わりますが、今年は3名を受け入れました。

実習は、館長による当館の概要説明、収蔵庫から機械設備室までさまざまなバックヤードの見学、学芸員それぞれの専門分野や担当した仕事についての講話、現在抱えている仕事の話(例えば、ガイドブック編纂)、展示作業(現在開催中の写真展)といった内容で、学芸に関わる座学、実務を中心にしたものです。それに加え総務部の仕事や設備、警備、受付、ショップ、私が担当する広報についてなど、博物館に関わる人たちにも話をきく時間があり、職種を超えた博物館業務全体を学んでいくプログラムになっています。

さらに、実習生にとっては大きな挑戦であり、私が思うに、とても充実している実習内容があります。「ミニ展示」の企画です。今回は、3階のたばこ常設展示室の一角で浮世絵を紹介しているコーナーでの展示を担当してもらうことになりました。ミニ展示を担当する学芸員を1人たて、実習生は、この学芸員が決めたテーマを元に、皆で話し合いながら、展示作品、解説文などの検討、執筆などを行いました。学芸員+実習生が担当したミニ展示のテーマは「江戸の人気者 朝比奈」です。10月下旬から展示予定ですので、みなさまにもご覧いただければ幸いです。

展示作業風景

展示に使用する道具の準備。写真をピクチャーレールにかけて展示するためのワイヤーです。
以前、ブログに写真を掲載したときは段ボールだらけだった事務所が、今は書類やら本だらけになっています、、、

展示に使用する道具の準備。写真をピクチャーレールにかけて展示するためのワイヤーです。ちなみに、ここは事務所です。以前、ブログに写真を掲載したときは段ボールだらけだった事務所が、今は書類やら本だらけになっています……。

作品を、展示する順に並べ、間隔や高さを計ってから展示です。まだ下準備の段階。

作品を、展示する順に並べ、間隔や高さを計ってから展示です。まだ下準備の段階。

脚立や踏み台に乗って、作品をかけていっています。

脚立や踏み台に乗って、作品をかけていっています。この後のレベル調整にも、なかなか時間がかかります。実習生の手付き、けっこう手慣れていますね。

移転、リニューアルして初めての実習生ということもあって、学生たちに話をきく機会を得ました。私たちスタッフは毎日同じコミュニティにいて、それぞれ個性や見方は違っても、個々の展示の見方や考え方に想像を超えたようなものはなかなか出てきません。そこで、実習でたば塩の内側に入り、ある程度事情を知った視点でみたたば塩がどのようなものなのかは、とても興味あることでした。当初、広報担当によるインタビューという名目で始まった実習生たちとの語らいは、結果的には雑談のようになってしまいましたが、当館での10日の実習を乗り越えて話す内容は興味深く、素敵なものでした。

たばこと塩の博物館に来てみて

「渋谷時代に行ったことがある。たば塩の印象は受付スタッフ。学芸員とかの印象はなかったけど、実際に会ってみて、親しみやすいし、アットホーム」
「表から見ているとゆったりしているけど、実際のスタッフはバタバタとしていることに気づいた」

これは、渋谷時代に受け入れた学生たちからも聞かれた感想でした。本当に表から見ると、落ち着いた感じなのです。それが実は……ということです。

「学芸員はさまざまな業務を行っているが、その中で研究者としての姿が印象的だった」
「自分の好きなことを仕事にしているから生き生きしている。専門分野のことを話すときにエネルギーを感じて、とてもいい」

私もそう思いますよ!それぞれの専門分野のことを話す学芸員の姿は、なんでしょう? うれしくなるのです。きっと、本人が生き生きしているからですね。

新館の展示・イベントで気づいたこと

いくつかあげてくれました。塩の学芸員が実習全体の担当だったこともあるのでしょうか? 塩についてのものが目立ちました。例えば、当館が夏休みに開催した「塩のミニ学習室」は、今年は実験とワークショップだけだったこともあって、科学の視点で塩を捉えた企画でしたが、「夏休みを使って、科学には興味がないけれど博物館に来てくれる子どももいると思うので、理科ではないアプローチの仕方を示したらどうだろう?」というアイデアが出ました。

また、面白かったのは、「2階『聖キンガ像』のアーチの両脇にある解説パネルが、きれいに設置され過ぎていて目に入らない」という意見です。なるほど。こちらとしては、両側同じ高さにとか、アーチから同じ間隔でとか、展示の邪魔にならないように、などと工夫しているからこその配置なのですが、ある程度邪魔にならないと目に入らないのでしょうか? 難しいところです。

今回の実習で感じたこと

「プログラムがよかった(毎日違うことができてよかった)」
「ひとりひとりの学芸員と話せたのがよかった」
「和気あいあいとした中で社会の実体験ができた」

活字にすると、今ひとつ重みがないようですが、学生たちから直接聞いた私には、その感動や感謝(と、館のスタッフが言うのもなんですが)がとても伝わってきました。

はっとして新鮮だったのが、「学生生活という日常をある時期捨ててここに来たけれど、それだけの価値があった」といった主旨の感想です。当たり前のことですが、実習に来ている学生も就職活動があったり、講義があったりする日常を抱えています。望んで受けた博物館実習ですが、その期間には別の不安や考え事もあったことでしょう。一方で、「自分の分野に取り組んでいる人を見て、自分も勉強を続けてみようと思った」という声も寄せてくれ、この時期のこの実習がこれからの進路に何かを投じたのかと思うと、重みを感じました。当館での経験が実習生たちの未来の、小さくても支えのようなものになっていたとしたら、うれしいことです。本当に、ご縁があったから、このたば塩でごく短いけど、同じ時間を過ごせたんだなとしみじみ感じました。

最後の最後に、学生たちから当館へのエールをもらいました。

「特別展も始まるということで、たば塩の今後の展開を楽しみにしております。また改めて、いち来館者としてうかがいます。ありがとうございました!」(Y・Iさん)
「これから先、何度も、何年もたば塩に来ると思います。楽しい企画展がたくさん生まれることを待っています!」(K・Tさん)
「私にとって新鮮な博物館でした。これからもそんな面白く、楽しい博物館であり続けてください! 根付と銃型きせるの展示、楽しみに待ってます!」(M・Aさん)

博物館実習は、実は、たば塩ファンを獲得できるものでもあるのです(笑)。

そして、9月19日(土)からは、渡部一紀さんの写真展「夫婦の斉しいゴール 銘葉水府たばこ」が始まりました。渡部さんがご自分の作品を手にたば塩にいらしてからおよそ5ヶ月。当館3階のロビーに素敵な空間ができています。作品は、あるたばこ栽培農家のご夫婦を撮影したものですが、このご夫婦への渡部さんの優しくて温かいまなざしを感じます。たばこ畑の写真やそこに添えたコピーを見ると、渡部さんはきっとロマンティストなのだろうなと思います。この話、ご本人には言っていませんが……。ちなみに渡部さんは、バンジージャンプの写真撮影もされているとのことで、ご自身もバンジーをされるそうです。そんな渡部さんの作品をぜひ観にいらしてください! 10月12日(月・祝)まで開催しています。

3階常設展示室と視聴覚ホールの間が展示スペース。この空間をつかっての展示は初めての試みで、たば塩にとっても新たなチャレンジです。。

3階常設展示室と視聴覚ホールの間が展示スペース。この空間をつかっての展示は初めての試みで、たば塩にとっても新たなチャレンジです。

写真家の渡部一紀氏。展示作業終了後、プロフィールの前で撮らせていただきました。

写真家の渡部一紀氏。展示作業終了後、プロフィールの前で撮らせていただきました。

11月3日(火・祝)からは、いよいよリニューアルオープン記念展「浮世絵と喫煙具 世界に誇るジャパンアート」が始まります。渋谷での開館以来、特別展は当館のとても大きな柱として成長してきました。特別展に期待してくださっている方も多いことと思います(ありがとうございます)。私自身、墨田のたば塩で初めて開催する特別展がとても楽しみですし、みなさまにお届けできるのが、とてもうれしいです。当館が誇る、歌麿の「扇屋内花扇」や、写楽の「四代目松本幸四郎の肴屋五郎兵衛」をはじめ、春信、北斎、豊国などの浮世絵、桂文楽が収集した素晴らしいたばこ入れのコレクションなど喫煙具の逸品をご紹介します。どうぞ、ご期待ください!

金木犀の香り、少し肌寒いけれどさわやかな風、過ごしやすい季節です。食べ物もおいしくて、つい食べ過ぎてしまったりもします。日々を楽しみながら過ごしたいと思える秋です。みなさまも、お身体を大切にお過ごしください。
それでは、またひと月後に! (Y・H)

当館のマスコット「お仙ちゃん」。

現在はクローズしている2階特別展示室の前でリニューアルオープン記念展のご案内をしているのは、当館のマスコット「おせんちゃん」。
彼女は、江戸時代の絵師・鈴木春信の浮世絵に描かれています。11月3日(火・祝)からはじまる記念展では、この作品も出展しますので、ぜひ、おせんちゃんに会いにいらしてください!