特別展Exhibition

Web企画展 [第6回] 浮世絵と喫煙具

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*当館所蔵浮世絵から*

現在、当館では開館以降に購入・寄贈されたものも含めて、浮世絵他絵画類1806点を収蔵していますが、その多くは佐々木長官の下で集められたものです。その中から今回は、「名品」とされる浮世絵を4点選び出してご紹介いたします。

遊色三福つい
絵師 : 奥村政信
落款 : 奥村政信図
改印 : なし
版元 : 不明
形状 : 大々判丹絵
時代 : 正徳(1711〜1716)頃
江戸の吉原、京の島原、大坂の新町の遊女を三尊像形式に配したもの。題辞の「三福つい」は、「三幅対」という言葉にかけている。東京国立博物館に墨摺りの作品が収蔵されているが、当館のものは丹を筆彩したもので珍しい。残念ながら絵の状態は良好ではないが、迫力のある作品である。江戸の遊女が持つきせるの手つきは、遊女特有の姿態として後世の浮世絵に影響を与えている。
遊色三福つい
おせん茶屋
絵師 : 鈴木春信
落款 : 春信画
改印 : なし
版元 : 不明
形状 : 中判錦絵
時代 : 明和2〜7年(1765〜1770)頃
多色摺り浮世絵版画を意味する「錦絵」創製に深く関わり、明和期を代表する美人画家でもあった鈴木春信の代表的作品の一つである。江戸谷中の笠森稲荷の前にあった「鍵屋」という水茶屋の娘おせんは、美人として知られ、浅草、浅草寺境内の楊枝屋「本柳屋」のおふじと共に、春信はよく浮世絵に描いた。おせんの店には、ある若い武士が通ったといわれる。画中の縁台に腰掛けたお高祖頭巾の男性が、たぶんそれであろう。縁台に描かれている喫煙具を小道具に、二人の間に起こった心象風景をうまく表現している。
おせん茶屋
敵討乗合噺 松本幸四郎肴屋五郎兵衛
絵師 : 東洲斎写楽
落款 : 東洲斎写楽画
改印 : 極
版元 : 蔦屋重三郎
形状 : 大判錦絵
時代 : 寛政6年(1794)頃
寛政6年5月から翌年の寛政7年1月のわずか9カ月の間に、150点近い作品を残し、忽然と浮世絵の世界から姿を消した「謎の浮世絵師」とも呼ばれる東洲斎写楽が描いた役者大首絵である。寛政6年5月桐座で公演された芝居で、任侠の肴屋五郎兵衛を演じた四代目松本幸四郎を描いたもので、写楽の作品としては早い時期のものである。幸四郎が手に持つきせるは、和飛助三つ玉筋と呼ばれ、このきせるを顎に当てて思案にふける様子を描く。ちなみに、この作品の価格は、収集時に、家一軒が買えるほどの値段であったと伝えられる。
敵討乗合噺 松本幸四郎肴屋五郎兵衛
当時全盛似顔揃 扇屋内花扇 よしの たつた
絵師 : 喜多川歌麿
落款 : うた麿筆
改印 : なし
版元 : 若狭屋与一
形状 : 大判錦絵
時代 : 寛政6年(1794)頃
喜多川歌麿は、吉原の遊女をはじめ、市井の美女たちなどを描いた作品も数多く、今日でも人気の高い浮世絵師である。この作品は「当時全盛美人揃」のシリーズにも同じ図がある。しかし、「美人揃」では、「花扇」は「扇」の字と「よしの たつた」の禿の名が削られて、「扇屋内 花」に変更されており、「扇屋内 花扇」で確認されるのはこの作品だけである。そうした文字の改変の裏には、歌麿の描いた四代目の花扇が、寛政6年(1794)に客と駆け落ちしたことが原因だともされていて、浮世絵研究の上でも貴重な作品である。なお、当館には、何代目の花扇が使用したものかは不明だが、花扇太夫持ちと伝えられる「朱漆塗り行燈形提げたばこ盆」を所蔵している。
当時全盛似顔揃 扇屋内花扇 よしの たつた
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