特別展Exhibition

過去の特別展

着物と装身具に見る江戸のいい女・いい男

粋な町人の遊び心が宿る男物の着物と装身具

普段使いの浴衣や下着の仕立てに凝ったり、実用品の「たばこ入れ」にも珍しい素材や細工を用いるなど、江戸の男性は、遊び心にあふれた「通好み」の着物や装身具を身につけていた。

「膝栗毛文様浴衣」 木綿地 型染め/明治
寸法:身丈139.0×裄64.4㎝

弥次郎兵衛と喜多八の珍道中を綴った十返舎一九作『東海道中膝栗毛』の各場面を染め出した浴衣。着たときにバランスよく見えるよう配置された図は全て別場面、しかも三色染めという大変凝ったもの。普段着に過ぎない浴衣に意匠を凝らす江戸の美意識が伝わってくる。

「唐桟裂縫合下着」 木綿地縞織(唐桟縞)、紬地/江戸後期〜明治
寸法:身丈141.5×裄62.0cm

色調の異なる「唐桟(とうざん)」ぎれを網代形に縫い合わせた下着。袖や脇などに縫い目がない、からくり細工のような仕立てになっている。唐桟は長崎貿易によりインドから輸入された木綿縞織物で、繊細な縞柄が特徴。絹織物に匹敵する薄さと滑らかな質感から珍重された。

「更紗天鵞絨縁取下着」 木綿地(更紗、捺染ビロード)、絹地/江戸後期〜明治
寸法:身丈142.0×裄63.9cm

ヨーロッパ産と思われる赤地更紗(さらさ)を胴に、ペイズリーと草花文様の紺色ビロードを縁(へり)に用いた綿入れ下着。縁が波形にかたどられている。江戸後期、「通好み」を意識する男性たちは下着に趣向を凝らし、僅かに覗く部分に珍しい舶来ぎれなどを用いたりした。

「格子小紋ふすべ革羽織」 鹿革(燻べ革)/江戸後期
寸法:身丈82.0×裄61.3cm

藁と松脂(まつやに)で革を燻して色づけする「燻(ふす)べ革」の技法で文様をあらわした革羽織。これは中流町人が用いたもので、鳶職などが用いた大柄なものと違い、通常の羽織と同じ寸法なのが特徴。日頃は防寒着として家紋と立浪文様を裏に、火事場では表にして着用したのだろう。

「花文刻印手金唐革腰差したばこ入れ」 明治〜大正
寸法:縦7.3×横12.2cm

オランダから輸入された「金唐革(きんからかわ)」と呼ばれる、もとは壁や家具などに使用した加工革を用いたたばこ入れ。江戸中期以降、とくに男性用のたばこ入れは、輸入した皮革や染織品などの高価な素材を使った、実用品ながら装身具的な意味合いの強いものが作られた。

「相良縫竹林七賢人象牙象嵌紙入れ」 江戸中期
寸法:縦12.5×横18.0cm

糸の結び玉を連ねて模様を描く「相良縫(さがらぬい)」による紙入れ。図柄は中国の三国時代に実在したとされる「竹林の七賢人」。世俗を離れた賢人の姿は文人画などにもよく描かれている。紙入れは、「鼻紙入れ」とも呼ばれ、外出時に小間物を入れて携帯した。