特別展Exhibition

Web企画展[第3回]ミニチュア

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岩崎 均史(主席学芸員)

* たばこと塩の博物館のミニチュア *

たばこと塩の博物館は、2013年8月、1978年の開館以来活動を続けてきた渋谷での最後の展覧会「35年の感謝をこめて 渋谷・公園通り たばこと塩の博物館物語」を開催し、沢山のお客様と当館の渋谷での活動を振り返り、名残を惜しみました。
 この企画の準備段階で、「あなたが好きだった特別展・企画展は?」「見たい館蔵資料は?」という設問のアンケートを実施しました。入館者が直接用紙に記入したもの、葉書やネット経由の回答を集約し、発表致しました(展示会場にても集計結果は展示されました)。

「好きだった展覧会は?」という回答で一位になりましたのが「小林礫斎(れきさい) 手のひらの中の美 技を極めた繊巧美術(2010年開催)」で、ミニチュア作品群が「見たい館蔵資料は?」の4位になりました。共に、直接的にたばこや塩に関係する資料ではありませんが(無関係ではないのですが・・)、多くの皆様の琴線に触れたということであり、この結果は、ミニチュア類が、当館を代表するコレクションの一つであることを実証してくれました。事実、小林礫斎のミニチュアを中心とする展示は35年の間に5回ほど開催していますが、回を重ねるごとに入館者は増加しました。さらに、他の組織からの依頼により、都内はもとより多くの地方都市でもお目見えし、愛好者は確実に右肩上がりに増加しました。

小林礫斎作品の組み合わせ

小林礫斎作品の組み合わせ
手前の人形は台を含めて1.7センチ弱、手足の関節は可動で頭髪は植毛されている。屏風は小林立堂の雉子図。箪笥は指物ではなく、塊からの刳り貫きでなされ、各引き出しには、さらに小さな小物まで入れられてある。

コレクションも基本となる旧中田實コレクションが寄贈されて以降、一部に分散していた中田實の遺贈品が、まるで磁場に寄せられるように寄贈された他、銀座平野屋旧蔵品が加えられるなど年々充実しています。この他、小林礫斎の美術工芸品的なミニチュアとは別の玩具としてのミニチュアも旧倉田家コレクションを核として収蔵数は増加しています。現在では、礫斎関連とその他の専売局時代からの博物館旧蔵資料が約800点、その他のミニチュア約800点を合わせて1600点ほどのコレクションが形成されています。

今回のWeb企画展は、当館の誇るミニチュアコレクションから、制作者である小林礫斎と理解者であり収集家の中田實の関係を振り返りながら、特色あるコレクションを概観致します。

* Web企画展のあらまし *

人は、昔からあらゆるものを元の大きさから縮小し、それを愛玩してきました。ミニチュアは、各時代・各地域で風俗や生活を鏡のように映し出し、人々の傍らで愛されてきましたが、特に日本人は、小さなものへの愛情と思い入れが強かったようで、さまざまなミニチュアが作られてきました。

当館では、明治から戦前にかけて、驚くべきミニチュア作品を制作していた小林礫斎(れきさい)の人と作品に注目してきました。彼の作品は、素材に凝り、実物を忠実に極限まで小さくしていくことと、随所に存在する驚くべき仕掛けに特徴があります。礫斎の作品は、単なる玩具の域を超え、特殊な形態の美術工芸品として位置づけられます。当館では1990年に開催した「小林礫斎の世界」以降、礫斎と彼のミニチュアに関する展示を開催し、旧中田實コレクション(礫斎作品を中心に極小工芸品を収集)を核として礫斎作品の収集などを行ってきました。

今回は、当館所蔵の礫斎の極めて小さな作品群を紹介します。どうぞ寸法の表示にご注意頂き、その小ささをご確認の上、ご鑑賞下さいますようお願い申し上げます。

中田コレクションの多くは、このような礫斎の手になるケースに収納されている

〈上〉中田コレクションの多くは、このような礫斎の手になるケースに収納されている(ケースは象牙で表裏は板ガラス。ケースの寸法は、約2.5×3.5センチほどしかない)。
〈右〉ケースから作品を出した状況。箱の下方に「礫斎」の銘が見られる。

ケースから作品を出した状況。箱の下方に「礫斎」の銘が見られる。
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