特別展Exhibition

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リニューアルオープン記念展 浮世絵と喫煙具〜世界に誇るジャパンアート〜

喫煙具について ─きせる・たばこ盆・たばこ入れ─

江戸時代の間、日本の文化は独自の発展を見せてきましたが、喫煙具もその例外ではありません。江戸幕府が、寛永16年(1639)にポルトガル船の入港禁止を打ち出し、海外との交流に制限をかける外交政策を取ったこともあり、日本では「細刻みたばこをきせるで吸う」という喫煙方法が一般的になりました。

たばこ盆は、喫煙の風習が始まった頃は香道具を載せた盆(香盆)を転用したりしていましたが、のちに箱形や長角形などのバリエーションが生まれていき、火入れ・灰落し・たばこ入れの3つが揃っていることがたばこ盆の基本形となりました。また、人の意表をつくような形のものや仕掛けを施したたばこ盆のほか、格式を重んじる大名や武士の家では蒔絵が施された美術品といって良い造りのたばこ盆が制作されました。

たばこ入れついては、江戸時代初期の絵画資料などから推察すると、はじめの頃は、以前からあった巾着・火打袋などの袋物を転用したようで、きせるに巾着を結び付けて持ち歩いている図などが見られます。その後、17世紀の終わり頃には紙製のたばこ入れが一般に広く普及し、やがて革や布などが素材として用いられ、人々の好みに合わせた装飾性を加えたものが作られていきました。

きせる

日本では、江戸時代から昭和時代初期頃まで、きせるによる喫煙方法が最も一般的でした。きせるの形は、雁首と吸口の間を「羅宇(らう・らお)」と呼ばれる竹でつなぐ「羅宇きせる」と、雁首から吸口までが全て同一の素材でできた「延(の)べきせる」の2つに大きく分けられますが、素材や形はバラエティーに富んでおり、現在当館では、1,000点余りのきせるを収蔵しています。

  • 「真鍮河骨形きせる(花見きせる)」
    全長:104.1cm

  • 「銅肩付河骨形きせる」全長:74.0cm

  • 「銅肩付河骨形きせる」全長:72.3cm

たばこ盆

香道具を載せた盆(香盆)から派生したたばこ盆ですが、箱形や長角形など、いろいろな形をしたものが存在します。持ち運びに便利な手提げ付きや、屋外での使用も考えて三方に風覆(かぜおおい)を付けた実用性を踏まえたものから、ひねりを効かせた形状のもの、豪華な装飾が施されたものまで、実にさまざまな作品を見ることができます。

  • 「朱漆内黒漆塗りたばこ盆」

  • 「朱漆塗りたばこ盆」

  • 「朱漆塗り行燈形提げたばこ盆」

  • 「梨子地波に葦蒔絵舟形たばこ盆」

  • 「黒漆塗り山水蒔絵屏風形手付きたばこ盆」

たばこ入れ

当館では、落語家の八代目桂文楽(1892-1971)が所有していたたばこ入れのコレクションの内、約半数にあたる40点を所蔵しています。これらはいずれも素材や組み合わせに凝った逸品ばかり。今回は、この旧桂文楽たばこ入れコレクションの中から、20点を厳選して展示いたします。

  • 「古渡縞鶏頭更紗(こわたりしまけいとうさらさ)腰差したばこ入れ」

  • 「古渡白地鶏頭更紗(こわたりしろじけいとうさらさ)腰差したばこ入れ」

  • 「菖蒲革(しょうぶがわ)腰差したばこ入れ」

  • 「古渡有平縞更紗(こわたりあるへいじまさらさ)腰差したばこ入れ」

  • 「金唐革(きんからかわ)腰差したばこ入れ」