過去の特別展・企画展
根付 ~古典根付から現代根付まで370点以上を展示!~
根付は本来、提げ物の付属品で、大きさも手のひらに収まるほどですが、その素材、形態、意匠は驚くほど多彩です。細密で巧みな彫刻を施したものも多く、独特の美を生み出しました。
根付の素材は、黄楊(つげ)、黒檀(こくたん)、一位(いちい)といった固い木材が最も多く、次に象牙、鹿角(かづの)などの牙角(げかく)類、そのほか陶磁、金属、骨、竹、水晶、べっこう、サンゴ、ガラスなど多岐に及びます。さらに人物や動物などの具体的な形を彫りだした「形彫(かたぼり)根付」、丸い形の「饅頭(まんじゅう)根付」など形態によっても大別されます。中でも、形彫根付は根付そのものが一つの彫刻品として完成されており、故事や説話、昔話、歌舞伎や能狂言を題材にしたものなど、ユーモアやウイットに富んだものが多く見られます。
今回の展示では、制作された年代ごとに、「古典根付」「近代根付」「現代根付」と3つに分類してご紹介します。
古典根付
江戸時代に制作された根付で、一部、明治時代初期のものを含みます。
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「関羽」
銘:無銘/素材:象牙/寸法:10.8cm/京都 清宗根付館蔵有名な中国の武将。『三国志』を題材にした根付も多く作られた。
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「あたり鉢にふく」
銘:無銘/素材:木、象牙/寸法:4.5cm/個人蔵「すり鉢=当鉢」、「ふく=福」で、「幸運に恵まれる」といった意味が込められた根付。
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「鶴の舞」
銘:舟月/素材:木/寸法:5.2cm/個人蔵扇子を持った男の仕草を影絵に写すと鶴に見えるというユニークな主題の形彫根付。
近代根付
明治・大正・昭和初期に制作された根付です。本展では近代根付の巨匠・森田藻己の作品と合わせ、兄弟弟子である大内玉藻や、藻己の弟子の作品も展示します。
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「向島みやげ」
銘:藻己/素材:木/寸法:3.3cm/個人蔵籠には向島名物の言問団子が入っているのだろうか。短冊には「春風に心ひらきて都鳥いさ言問の花のつちうら」と彫られている。
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「翁面」
銘:藻己/素材:木/寸法:4.5cm/個人蔵森田藻己作の面根付。実用品というよりは観賞用として作られたと思われる。
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「たらいは駕籠にあらず」(大久保彦左衛門)
銘:藻己、昇己/素材:木/寸法:3.4cm/個人蔵森田藻己の遺作で、弟子の西野昇己が補作した作品。
現代根付
昭和中期頃から活躍し始めた根付作家の作品です。今回は根付の研究者であり、コレクターでもあった高円宮憲仁親王殿下が所蔵されていたコレクションも展示します。
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「晩秋」
作者:桜井英之/素材:木/寸法:3.8cm/個人蔵昭和40年代の終わりから始まった「現代根付運動」を広めた作家のひとり。仕上げの技法にも優れた技が見られる逸品。
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「切られ與三郎」
作者:雅俊/素材:象牙/寸法:3.5cm/高円宮殿下コレクション歌舞伎役者の十五代目市村羽左衛門がモデルとされる。
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「手品」
作者:デービィッド・カーリン/素材:木、琥珀/寸法:3.2cm/京都 清宗根付館蔵ルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』に登場する白ウサギがモチーフ。
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「賢人―古の祈祷師」
作者:アンソニー・タウン/素材:セイウチ牙化石/寸法:8.2cm/高円宮殿下コレクション古代のシャーマン。狐の被り物は「土」、羽飾りは「空」、髭の左側の魚は「水」、右側の炎は「火」の4大要素を表している。
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「メビウス達磨」
作者:マイケル・バーチ/素材:マンモス牙/寸法:5.3cm/高円宮殿下コレクション抽象化された達磨。瞑想はメビウスの輪となり、永遠に続いていく。
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「dream finger」(ドリームフィンガー)
作者:中西宏明/素材:乾漆、ガラス、蒔絵/寸法:7.5cm/個人蔵根付の代表的な素材は木や象牙だが、現代根付にはさまざまな素材が使われる。この作品は、漆とガラスが用いられている。