過去の特別展・企画展
提げ物 ~形も素材もさまざまな約80点を紹介!~
巾着や印籠、たばこ入れなどの袋物を総称して「提げ物」といいます。
印籠は、薬などを携帯する袋物で、桃山から江戸時代初期に、装飾品として急速に発達しました。たばこ入れは、刻みたばこを携帯する袋物で、当初は火打袋や巾着などを転用していましたが、享保(1716~1736年)頃になると、素材や形が多様化し、“袋物屋(商)”と呼ばれる専門店で、各人の好みに合わせて作られるようになります。印籠が主に武士の装身具として使用されたのに対して、たばこ入れは町人の代表的装身具でした。
本展では形や素材もさまざまな提げ物、約80点を展示します。
火打袋・巾着
火打石や火打金、火口(ほくち)などの火打ち(燧)道具を入れたり、さまざまな小物類を携帯するために使われました。
印籠
印籠は三段から五段の容器を重ねて、両側の穴からひもを通して、ふたや各段の開閉を調整する作りになっていて、一般的には扁平な長方形のものが多く見られます。当初は実用的なものでしたが、徐々に装身具としての意味が強くなりました。特に江戸時代後期、武家や富裕な町人層が注文して作った印籠は、教養や機知にあふれた遊びの精神がうかがえます。
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「源頼政鵺退治蒔絵印籠」
銘:光柳斎/木胎の寸法:縦8.4cm×横5.9cm/緒締:珊瑚/根付素材:象牙/根付題材:琵琶法師/銘:利国/掛川市二の丸美術館蔵木胎に描かれた鵺(ぬえ)は、源頼政が紫宸殿で射止めた伝説上の化けもの。
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「石蕗蒔絵螺鈿印籠」
銘:羊遊斎/木胎の寸法:縦7.5cm×横4.5cm/緒締:珊瑚/根付素材:木に蒔絵螺鈿/根付題材:水草/銘:無銘/掛川市二の丸美術館蔵黒字に金蒔絵で石蕗(つわぶき)を描き、左上方の蜘蛛の巣を細い螺鈿で表している。
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「菊に蝶芝山細工印籠」
銘:芝山/木胎の寸法:縦9.0cm×横5.4cm/緒締:珊瑚/根付素材:堆朱/根付題材:菊形/銘:無銘/國學院大學蔵芝山細工は、江戸時代後期に上総国芝山の大野木専蔵が考案したといわれる技法。
たばこ入れ
たばこ入れは、腰に提げる「提げたばこ入れ」と着物の懐に入れる「懐中たばこ入れ」の大きく二つに分けられます。特にきせる筒と袋を根付で提げる「提げ」、袋だけを根付で提げる「ひとつ提げ(袋)」とよばれる形のたばこ入れには、さまざまな形態・意匠がほどこされた根付が見られます。
武士が刀のこしらえを競ったのに対して、町人はたばこ入れに贅を尽くしました。
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「茶羅紗提げたばこ入れ」
袋の寸法:縦7.3cm×横12.3cm/緒締:ガラス/根付素材:木/根付題材:蝸牛に牛/銘:自化眼文/たばこと塩の博物館蔵羅紗は厚手のウールの生地。江戸の町人たちは外国から来た珍しい布や革を用いてたばこ入れを作った。
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「紫爪菖蒲革提げたばこ入れ」
袋の寸法:縦6.5cm×横12.4cm/緒締:瑪瑙/根付素材:木/根付題材:木魚/銘:無銘/たばこと塩の博物館蔵昭和の名人と呼ばれた噺家で、たばこ入れの蒐集家でもあった八代目桂文楽の旧蔵品。
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「青羅紗提げたばこ入れ」
袋の寸法:縦7.2cm×横12.8cm/緒締:金属/根付素材:木/銘:無銘/たばこと塩の博物館蔵きせるで吸ったたばこの火玉を受けられるように、椀型に作られた“火はたき根付”が付いたたばこ入れ。
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「金唐革一つ提げたばこ入れ」
袋の寸法:縦8.0cm×横10.5cm/緒締:木/根付素材:木/根付題材:龍と唐草/銘:遊藻/たばこと塩の博物館蔵金唐革は、江戸時代に作られた皮革素材で、ヨーロッパでは壁紙ならぬ壁革として使われていた。
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「達磨形とんこつ一つ提げたばこ入れ」
袋の寸法:縦8.9cm×横8.6cm/緒締:鹿角/根付素材:木/根付題材:達磨/銘:無銘/掛川市二の丸美術館蔵容器、緒締、根付ともに達磨形に彫刻されている。容器は顔の部分で開閉する作り。
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「竹細工一つ提げ紙巻用たばこ入れ」
寸法:縦10.3cm×横8.1cm/緒締:竹の節/根付素材:籐細工/個人蔵紙巻たばこ用のたばこ入れ。根付の世界的コレクター、レイモンド・ブッシェル著『根付』の中にもこれと似た作品が掲載されている。
稲葉通龍の名著『装剣奇賞』の
手稿本、初版本、後版本を
一堂に展示!
刀装金工や根付師について書かれた『装剣奇賞』(天明元年[1781]/稲葉通龍(いなばつうりゅう)著)は、江戸時代中期に活躍した根付師57名を紹介する名鑑的な書物です。
本展では、同書の手稿本、初版本、後版本(ここでは、版の一部が修正された後修本)を合わせて展示。また、同書に載っている根付師の手がけた作品や絵画なども紹介します。