特別展Exhibition

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丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織 ~塩袋と旅するじゅうたん~

塩袋 Salt Bag ‘Namakdan’

遊牧生活に不可欠な塩を入れておくための専用の袋。家畜が頭を入れて勝手に塩を取ることができないように、開口部を狭くした凸型をしている。イランでは“ナマクダン”と呼ばれる。

東イラン
バルーチ・トルクメン族
1930年頃 羊毛 54×33cm
Baluch Turkmen, North East Persia,
ca.1930, wool

イラン東部、アフガニスタン、パキスタンと隣接する広大なシスタン・バルチスタン州に、かつて遊牧した部族のもの。バルーチ・トルクメン族の塩袋の良品は珍しく、昔日の騎馬民族が偲ばれる好資料である。

東イラン(トルバテ・ヘイダリエ)
バルーチ族
1920年頃 羊毛 58×21cm
Baluch, North East Persia : Torbat-e Heidaryeh,
ca.1920, wool

厳しい環境下の遊牧生活を思わせる野性味あふれる作品。ホラサンエリアに近い、トルバテ・ヘイダリエのバルーチ族は、キリム織りを得意とし、部族特有の緻密紋様を織り込むことで知られる。

アフガニスタン
ウズベク系タータリ族
1930年頃 羊毛 38×31cm
Uzbek Tartari, Afghanistan, ca.1930, wool

大きさ、意匠、ふさ等の製作バランスが特に優れた塩袋。アフガニスタン北部のタータリ族は半農半遊牧の部族で、明るく華やかなキリムがたくさん織られたが、絨毯は少ない。

キリム Kilim

羊毛糸の平織物のこと。キリム織で作られる袋物も多いが、単に“キリム”というときは敷物として使う平織物を指す。イランでは“ギリム”というが、世界的にはトルコ語のキリムが通用している。

南イラン
カシュガイ族(ファース)
1940年頃 羊毛 285×156cm
Qashqai of Fars, South Persia, ca.1940, wool

中央の三つの大きなメダリオンやボーダーの意匠など、古くからの伝承模様で埋めつくされている。現在、カシュガイ族に属するグループは激減したが、彼らの誇りである部族文様は、現代の作品にも必ず取り入れられている。

北東イラン(トルバテ・ヘイダリエ)
バルーチ族
1930年頃 羊毛 280×168cm
Baluch, North East Persia : Torbat-e Heidaryeh,
ca.1930, wool

最も厳しい環境下で暮らすバルーチ族の昔のキリムの代表作。伝承の部族紋が緻密に織り込まれている。家畜と長い旅を続けながら、大地に打ちつけた簡易水平機で織巾を測り少しずつ織り進めた。羊毛は柔らかくたわみやすいので、苦心が偲ばれる。

北西イラン
シャーサバン族
1920年頃 羊毛・木綿 238×127cm
Shahsavan, North West Persia, ca.1920, wool & cotton

やや太めの強い羊毛が用いられた、強いストライプ柄が印象的なシャーサバン族の古いキリム。シャーサバン族は現在、ほとんど遊牧生活を終え、定住している部族。昔から秀でたキリムや袋類が知られている。