特別展Exhibition

過去の特別展

伊達男のこだわり ~きせる・たばこ盆・たばこ入れに見る職人の技~

きせる

きせるは、金属製の雁首と吸口の間を羅宇と呼ばれる木や竹でついだ羅宇きせると、火皿から吸口までが全て金属でできている延べきせるに大別されます。装身具としての機能も果たしたきせるには、見事な彫りや装飾が施されたものが多く見られます。

「松に蝉図きせる」
行年七十一才政盧 天保5年(1834)頃
23.9cm/素材:銀

羅宇部分は、まだら模様のある「斑竹」を用いて松の幹に見立て、銀製の雁首と吸口には松の幹が彫り出されている。蝉の体は赤銅で、その羽の細かい筋は金で表されている。

「蓮形きせる」
38.0cm/素材:真鍮

火皿部分は蓮に見立てた作りで、振ると蓮の実が動くようになっている。羅宇には蓮の蔓が巻きつき、蟹がのせられている。

「富士山に鳥刺図きせる」
21cm/素材:銀

葛飾北斎が編纂した櫛ときせるのデザイン本『今様櫛きん雛形』に掲載されている図案が彫られている。

「葦に水鳥図きせる」
19.5cm/素材:四分一(銀と銅の合金)
銘:勝廣 香川勝廣 作
佐藤コレクション

雁首と吸口それぞれの両端に金が使われ、水辺にたたずむ水鳥と葦が立体的に表現されている。羅宇は竹を象った象牙製。

伊達政宗のきせる

仙台藩の初代藩主・伊達政宗(1567〜1636)の小姓が晩年に残した言行録には、日に4度規則正しく喫煙する様子が記されています。政宗公の墓所である瑞鳳殿より発掘されたきせるは、比較的早い時期のきせるの形状が分かる貴重なもの。火皿の直径は約2cm、全長は約68cmという大きなものだったことが見てとれます。

きせる雁首・吸口 伊達政宗墓所副葬品
〈上〉雁首7.5cm 吸口11.2cm 全長63cm(想定)火皿の直径1.8cm
〈下〉雁首8.5cm 吸口12.5cm 全長68cm(想定)火皿の直径2.0cm
仙台市指定文化財・仙台市博物館蔵

雁首と吸口はいずれも銅製。その間をつなぐ木製の管は朽ちてしまっている。全長の想定数値は、発掘時の置かれていた状態での計測に基づく。

伊達政宗墓所 瑞鳳殿外観
画像提供:公益財団法人瑞鳳殿