過去の特別展
たばこ入れ
喫煙に必要な道具を携帯できるようにまとめた袋物で、きせる筒、袋、根付などで構成されています。形状としては、提げたばこ入れのほか、一つ提げたばこ入れ、腰差したばこ入れ、懐中たばこ入れなどに分類されます。構成する部品ごとに職人の技を見ることができ、素材や組み合わせの妙も楽しむことができます。
「駒菖蒲革差し根付たばこ入れ」
前金具:金 蓮葉に蜻蛉(銘:高畑一志 花押) 緒締:瑪瑙
根付: 鹿角 河童(銘:谷)
個人蔵
袋の駒菖蒲革は、鹿革に菖蒲と馬の文様を白く染め抜いた伝統的な日本の皮革である。かぶせを開けると鮮やかな更紗がのぞく。根付の河童は鹿の角と鹿の毛でできている。
「紫地金唐革一つ提げたばこ入れ」
前金具:銀 河豚彫り(銘:勝珉) 緒締:珊瑚
根付: 象牙 興福寺古瓦彫り(銘:公鳳斉)
個人蔵
金唐革は、牛馬のなめし革に金属箔を貼り、文様を打ち出した上に彩色したもので、舶来品として珍重された。特にこの袋は、スペイン国王による特注品で、歌舞伎役者・六代目尾上菊五郎が後世手に入れ、たばこ入れに仕立てたというエピソードを持つ。
廃刀令と喫煙具
明治9年(1876)の廃刀令の施行により、刀装金工の職人たちは日用品作りへの転向を余儀なくされました。当時、刀装具とそれ以外の金工職人では技量も社会的地位も大きく異なっていたため、当人たちには葛藤もあったようです。しかし、刀装で培われた技術の転用によって喫煙具の名品が次々と生み出されていきました。
「枝菊図はばき」
加納夏雄 作 明治14年(1881)
銘:なつを刻
金無垢地
個人蔵
「はばき」とは、鞘を守り、刀身が抜け落ちないようにする刀装具。名工・加納夏雄が手掛けたはばきで、現在確認できるのは、今回展示するこの1点を含めて世界で3点のみとされる。