特別展Exhibition

役者に首ったけ!

第3部 舞台がはねても首ったけ

役者への関心は舞台姿に止まらず、役者がくつろぐ楽屋や日常の姿にも及んだ。安永9年(1780)には、勝川春章が絵本「役者夏の富士」でこうした場面を描き、以降、浮世絵でも描かれるテーマとなった。また、団扇絵やおもちゃ絵など生活の中で使って楽しむ役者絵からは、贔屓役者の絵を身近に置いておきたいという、ファンの心理が感じられる。舞台を離れても役者は人々の関心の的だったのである。

楽屋図江戸芝居三階之図

江戸芝居三階之図
大判錦絵3枚続き 歌川豊国 享和(1801〜1804)頃

かつらつけ
おもちゃ絵

「かつらつけ」と呼ばれるおもちゃ絵。右側の上段には八代目市川団十郎、下段には初代中村福助が描かれている。左側には複数の役柄のかつらが描かれており、切り抜いたかつらを、身支度前の役者の頭にあてて遊ぶ。

かつらつけ 大判錦絵
歌川芳虎 安政元年(1854)7月

有卦絵(うけえ)

江戸後期から明治にかけて、有卦(吉事が続く時期)と無卦(凶事が続く時期)が12年周期で繰り返すという俗信の一種、有卦無卦説が流行。有卦の年回りに入る人には、福にかけて「ふ」の字で始まるめでたいものを描き込んだ有卦絵を贈る習慣がうまれた。
「七ふ字有卦入船」には、「ふ」の字で始まる七つの役に扮した初代中村福助が乗っている。福助は名前が「ふ」で始まるため有卦絵によく描かれた。

七ふ字有卦入船(しちふのじうけにいりふね)

七ふ字有卦入船(しちふのじうけにいりふね)
大判錦絵2枚続き 三代歌川豊国
安政4年(1857)

芝居絵を楽しむツボ 伊達に「たばこ」を名乗っちゃいけません

歌舞伎の小道具には役者の紋が入っているものが多く見られる。

茶印伝革大形提げたばこ入れ

茶印伝革大形提げたばこ入れ

芝居絵を楽しむツボ 役者が着ればダジャレもオシャレ

現代でもタレントが着た服が流行するように、役者が好んで衣装や小道具に用いた柄も当時の人々に愛用された。鎌○ぬ(かまわぬ)は、もともと町奴(侠気のある町人)が着ていたが、七代目市川団十郎が舞台で着用し流行の柄となった。

曽我祭侠競(そがまつりいきじくらべ)曽我祭侠競(そがまつりいきじくらべ)

曽我祭侠競(そがまつりいきじくらべ)
大判錦絵3枚続き〈部分〉 歌川豊国 文化10年(1813)